令和5年10月から適格請求書等保存方式(以下、インボイス制度)がスタートします。これから3回にわたって、社会福祉法人におけるインボイス制度への対応について解説いたします。インボイス制度を理解するには、消費税の計算の仕組みを知ることが必要です。第1回目のこの記事では、消費税の計算の仕組みと消費税の計算方法、社会福祉法人における消費税の計算方法について解説いたします。
1 消費税の計算の仕組み
消費税の取引は、①課税取引、②非課税取引、③不課税取引の3つに分かれます。
①課税取引
消費税のかかる取引をいいます。消費税のかかる取引とは、次の3要件を満たす取引をいいます。
・国内で事業者が事業として行う
・対価を得て行う
・資産の譲渡、資産の貸付け、役務の提供
スーパーで食品を買うという取引を例に挙げると、国内でスーパーという事業者が事業として行っており、食品という資産の譲渡で対価を得ていることから、消費税の課税取引と判断されます。
②非課税取引
消費税のかかる取引のうち、課税取引とするのが馴染まないため課税取引としていない取引をいいます。土地の譲渡および貸付け、社会保険医療の給付等、介護保険サービスの提供等、社会福祉事業等によるサービスの提供等など、消費税法で限定された取引のみが消費税の非課税取引となります。
例えば、デイサービスの介護給付費については、国内で事業者が事業として行っており、デイサービスという役務の提供を対価を得て行っていますので、課税取引の3要件に当てはまりますが、消費税法により非課税取引とされているため非課税取引となります。
③不課税取引
そもそも消費税のかからない取引をいいます。寄附金、補助金、会費、給与など、課税取引の3要件に当てはまらないものが該当します。
2 消費税の計算方法
2期前の消費税の課税対象の収入(以下、課税売上高)が1,000万円を超える場合には、消費税を納める義務が発生します(納める義務のある法人のことを課税事業者といいます)。1,000万円以下であれば、消費税を納める義務はありません(納める義務のない法人のことを免税事業者といいます)。消費税の納税義務の有無の判定のため、課税売上高の集計は行っておくことをお勧めします。
消費税の計算には、次の2つの方法があります。
①原則的な計算方法(以下、本則課税制度)
受け取った消費税から支払った消費税(仕入税額)を引いた金額を集計して、納付金額を計算します。
②簡易課税制度
受け取った消費税を6種類に区分して、それぞれ支払った消費税額を概算で引いて、納付額を計算する制度です。
2期前の課税売上高が1,000万円超5,000万円以下の場合に、事前に選択して適用することができます。課税売上高が5,000万円を超える場合には、強制的に本則課税が適用されます。
3 社会福祉法人における消費税の計算方法
①本則課税制度の場合
受け取った消費税から支払った消費税を引いた金額を集計して納付金額を計算するのが原則ですが、課税売上高と非課税対象の収入の合計に対する課税売上高の割合(以下、課税売上割合)が95%を下回る場合等には、課税売上割合を支払った消費税額にかける必要があります。社会福祉法人の場合は、消費税が非課税対象となる収入が多くあり、支払った消費税を全額引くことができない場合がほとんどです。また、補助金や寄附金などの特定収入割合が5%を超える場合には、さらに調整が必要です。
(計算例)
・課税売上108,000円(うち消費税8,000円)
・非課税売上100,000円
・課税仕入55,000円(うち消費税5,000円)
・特定収入なし
納付額は、受け取った消費税8,000円-(支払った消費税5,000円×課税売上割合100,000円/200,000円)=5,500円となります。
②簡易課税制度の場合
受け取った消費税を6種類に区分して、それぞれ支払った消費税額を概算で引いて、納付額を計算する制度です。6種類の内容と概算の消費税額は予め決められています。例えば、製造にかかる収入は第3種、飲食の提供にかかる収入は第4種、福祉サービスにかかる収入は第5種などとなっています。
実務上は、簡易課税制度が適用できる場合には、消費税のかかる売上のみを6種類に区分して経理処理しておけばよく、支払った消費税については経理処理を行わなくても、納付金額を計算することができます。
(計算例)
・課税売上108,000円(うち消費税8,000円) クッキーを製造・販売する場合
納付額は、受け取った消費税8,000円×(1-製造業70%)=2,400円となります。
次回は、インボイス制度の概要と社会福祉法人の対応方法について解説いたします。
YouTubeでも社会福祉法人のインボイス対応の動画を公開しております。法人内への周知などに、ぜひご活用ください。
令和4年8月1日時点の情報に基づき記載しております。
上記はあくまでも消費税の計算方法の仕組みを簡易的に記載したものであり、法律上の文言や実際の計算方法とは一部異なります。具体的な計算方法については、顧問税理士にお問い合わせください。
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TEL : 052-589-2301 FAX : 052-589-2316
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1 消費税の計算の仕組み
消費税の取引は、①課税取引、②非課税取引、③不課税取引の3つに分かれます。
①課税取引
消費税のかかる取引をいいます。消費税のかかる取引とは、次の3要件を満たす取引をいいます。
・国内で事業者が事業として行う
・対価を得て行う
・資産の譲渡、資産の貸付け、役務の提供
スーパーで食品を買うという取引を例に挙げると、国内でスーパーという事業者が事業として行っており、食品という資産の譲渡で対価を得ていることから、消費税の課税取引と判断されます。
②非課税取引
消費税のかかる取引のうち、課税取引とするのが馴染まないため課税取引としていない取引をいいます。土地の譲渡および貸付け、社会保険医療の給付等、介護保険サービスの提供等、社会福祉事業等によるサービスの提供等など、消費税法で限定された取引のみが消費税の非課税取引となります。
例えば、デイサービスの介護給付費については、国内で事業者が事業として行っており、デイサービスという役務の提供を対価を得て行っていますので、課税取引の3要件に当てはまりますが、消費税法により非課税取引とされているため非課税取引となります。
③不課税取引
そもそも消費税のかからない取引をいいます。寄附金、補助金、会費、給与など、課税取引の3要件に当てはまらないものが該当します。
2 消費税の計算方法
2期前の消費税の課税対象の収入(以下、課税売上高)が1,000万円を超える場合には、消費税を納める義務が発生します(納める義務のある法人のことを課税事業者といいます)。1,000万円以下であれば、消費税を納める義務はありません(納める義務のない法人のことを免税事業者といいます)。消費税の納税義務の有無の判定のため、課税売上高の集計は行っておくことをお勧めします。
消費税の計算には、次の2つの方法があります。
①原則的な計算方法(以下、本則課税制度)
受け取った消費税から支払った消費税(仕入税額)を引いた金額を集計して、納付金額を計算します。
②簡易課税制度
受け取った消費税を6種類に区分して、それぞれ支払った消費税額を概算で引いて、納付額を計算する制度です。
2期前の課税売上高が1,000万円超5,000万円以下の場合に、事前に選択して適用することができます。課税売上高が5,000万円を超える場合には、強制的に本則課税が適用されます。
3 社会福祉法人における消費税の計算方法
①本則課税制度の場合
受け取った消費税から支払った消費税を引いた金額を集計して納付金額を計算するのが原則ですが、課税売上高と非課税対象の収入の合計に対する課税売上高の割合(以下、課税売上割合)が95%を下回る場合等には、課税売上割合を支払った消費税額にかける必要があります。社会福祉法人の場合は、消費税が非課税対象となる収入が多くあり、支払った消費税を全額引くことができない場合がほとんどです。また、補助金や寄附金などの特定収入割合が5%を超える場合には、さらに調整が必要です。
(計算例)
・課税売上108,000円(うち消費税8,000円)
・非課税売上100,000円
・課税仕入55,000円(うち消費税5,000円)
・特定収入なし
納付額は、受け取った消費税8,000円-(支払った消費税5,000円×課税売上割合100,000円/200,000円)=5,500円となります。
②簡易課税制度の場合
受け取った消費税を6種類に区分して、それぞれ支払った消費税額を概算で引いて、納付額を計算する制度です。6種類の内容と概算の消費税額は予め決められています。例えば、製造にかかる収入は第3種、飲食の提供にかかる収入は第4種、福祉サービスにかかる収入は第5種などとなっています。
実務上は、簡易課税制度が適用できる場合には、消費税のかかる売上のみを6種類に区分して経理処理しておけばよく、支払った消費税については経理処理を行わなくても、納付金額を計算することができます。
(計算例)
・課税売上108,000円(うち消費税8,000円) クッキーを製造・販売する場合
納付額は、受け取った消費税8,000円×(1-製造業70%)=2,400円となります。
次回は、インボイス制度の概要と社会福祉法人の対応方法について解説いたします。
YouTubeでも社会福祉法人のインボイス対応の動画を公開しております。法人内への周知などに、ぜひご活用ください。
令和4年8月1日時点の情報に基づき記載しております。
上記はあくまでも消費税の計算方法の仕組みを簡易的に記載したものであり、法律上の文言や実際の計算方法とは一部異なります。具体的な計算方法については、顧問税理士にお問い合わせください。
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