厚生労働省・中央社会保険医療協議会(中医協)総会は令和5年1月18日が開催され、令和5年度の薬価制度の見直しについて、令和6年度診療報酬改定に向けた検討の進め方について等が了承されました。

 令和5年度薬価改定における具体的内容として、「令和5年度薬価改定の骨子」(令和4年12月21日中医協了解)において実施するとされた事項に関し令和5年度薬価改定における具体的内容として、薬価算定基準が改正されました。
【令和5年度薬価改定内容】
(1)薬価
・令和4年薬価調査に基づき、改定の対象範囲については、国民負担軽減の観点から、平均乖離率7.0%の0.625倍(乖離率4.375%)を超える品目を対象とする。
(2)薬価算定ルール
・令和3年度の改定時に適用したルール(新薬創出等加算、最低薬価等)は令和5年度改定においても適用する。更に、令和5年度改定においては、イノベーションに配慮する観点から、新薬創出等加算の加算額を臨時・特例的に増額し、従前の薬価と遜色ない水準とする対応を行う。
・不採算品再算定については、令和5年度改定において適用する。急激な原材料費の高騰、安定供給問題に対応するため、令和5年度改定に限り不採算品再算定について臨時・特例的に全品を対象に適用する。
・ 収載後の外国平均価格調整については、令和5年度改定において適用する。
・新薬創出等加算の累積額控除及び⻑期収載品に関する算定ルールについては、令和5年度改定において適⽤しない。その上で、令和6年度改定において、「国⺠皆保険の持続可能性」と「イノベーションの推進」を両立する観点から、新薬創出等加算や⻑期収載品に関する薬価算定ルールの見直しに向けた検討を行う。
・その他の既収載品の算定ルールについては、評価に一定の時間を要することなどから、令和5年度改定において適用しない。
これらにより、薬剤費は▲3,100億円(国費▲722億円)の削減とする。

 新たに設置される「2024年度の同時報酬改定に向けた意見交換会(仮)」は、医療と介護で共通する課題について、診療報酬を担当する中央社会保険医療協議会と介護報酬などを担当する介護給付費分科会が認識を共有することを目的とされ、具体的な報酬に関する方針は決定しません。今年の3月以降から3回程度の開催を予定されており、以下のような内容が議題として検討されています。
【議題(案)】
1. 地域包括ケアのさらなる推進のための医療・介護・障害サービスの連携
2. 高齢者施設・障害者施設等における医療
3. 認知症
4. リハビリテーション・口腔・栄養
5. 人生の最終段階における医療・介護
6. 訪問看護
7. 薬剤管理
8. その他

 令和6年度の診療報酬改定に向けた検討の進め方(案)として、以下の人口動態や社会情勢の変化や医療提供体制改革等を踏まえ、検討を進めることが提案されました。
【背景】
・ポスト2025年も見据えた介護報酬及び障害福祉サービス等報酬との同時改定であること
・2025 年に向けて地域医療構想の取組を進めるとともに、さらに医療介護総合確保促進会議で「ポスト2025年の医療・介護提供体制の姿」がとりまとめられること
・感染症法・医療法改正により新たに追加された「新興感染症への対応」を含む5疾病6事業等の見直しを行う第8次医療計画が令和6年度から開始になること
・医師の働き方改革として2024 年4月に労働時間上限規制等、改正労働基準法および改正医療法が施行すること
・医療DXの実現に向けて、医療DX推進本部等において議論が進められていること
・革新的な医薬品や医療ニーズの高い医薬品の日本への早期上市や医薬品の安定的な供給を図る観点から、「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」において、流通、薬価制度、産業構造の検証など幅広く議論し、とりまとめが行われること
・プログラム医療機器(SaMD)の評価体系を検証し、今後のあり方について検討が求められていること

 いわゆる2025年問題を目前にし、あるべき医療介護の提供体制、その提供体制にも影響を与える医師の働き方改革、感染症対策などを踏まえた第8次医療計画、それらを支える安定的な医薬品供給体制の整備、医療DXやSaMDの活用というところでしょうか。
引き続き行政の動きを注視してまいります。


               株式会社名南メディケアコンサルティング シニアコンサルタント
                            薬剤師・中小企業診断士  植木隆之