政府は2023年2月10日、「全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案」を閣議決定しました。加藤勝信厚生労働大臣は、同法案において、①地域において、かかりつけ医機能をしっかりと提供できる体制の構築、②高齢化に伴う様々な医療ニーズ等に対応できる体制を構築、③世代にかかわらず負担能力に応じて負担していただく方向へ舵を切っていく、としています。成立すれば、2025年4月から施行となります。
 同法案には、かかりつけ医機能が発揮される制度整備、出産育児一時金に係る後期高齢者医療制度からの支援金の導入、後期高齢者医療制度における後期高齢者負担率の見直し、市町村による介護情報の収集・提供等に係る事業の創設等の措置、等が盛り込まれています。

 本稿では「かかりつけ医機能」についてお話し致します。
 「かかりつけ医機能」に関しては、(1)継続的な医療を要する者に対する発生頻度が高い疾患に係る診療やその他の日常的な診療を総合的かつ継続的に行う機能、(2)時間外診療を行う機能、(3)病状急変時など入院が必要な場合に必要な支援を提供する機能、(4)居宅等において必要な医療を提供する機能、(5)介護サービス等の提供者と連携して必要な医療を提供する機能、と定義されています。また、かかりつけ医機能を担う医療機関に対して、ニーズに応じて担う「かかりつけ医機能」を都道府県に報告することを義務付ける「かかりつけ医機能報告制度」を創設、国民・患者が医療機関を適切に選択できるよう都道府県ごとに運用している医療機能情報提供制度の拡充が図られます。また、継続管理が必要な患者に対し、医療機関が提供する「かかりつけ医機能」の内容を説明することを努力義務とします。
 以前より「かかりつけ医」の役割やその重要性は議論されていましたが、いわゆる大病院志向や、どこの医療機関がどのような特徴や機能があるのかわからない、という情報非対称性の問題などもあり、「かかりつけ医」を持つ人は5割程度だそうです。しかしコロナ禍などにより、休日夜間での対応や、基礎疾患を持つ方の対応など、何かあった際、日常的に相談できる医療機関のニーズが高まっています。医療機関としては、適切に自院の機能を地域に認知してもらい、不足する部分は他施設との連携により補完しながら、働き手不足などによる限られた経営資源をうまく活かしながら、地域での質の高い医療を提供していくことがより重要になるのかもしれません。
 引き続き行政の動きを注視してまいります。

               株式会社名南メディケアコンサルティング シニアコンサルタント
                            薬剤師・中小企業診断士  植木隆之