財務省は2023年5月11日、国の予算等の具体的な方針を財務相に提言する諮問機関である財政制度等審議会・財政制度分科会を開き、増大する医療費などを賄うための財源の確保などについて議論されました。
財務省ホームページに掲載されている 議事要旨のなかから、筆者が特に気になった部分を、カテゴリーに別けてご紹介します。
あくまでも、財務大臣の諮問機関であり、委員も主に経済学者/アナリスト系と企業経営者(中でも医療に関わりありそうなのは傘下に製薬会社をもつ十倉雅和分科会長(住友化学(株)会長/経団連会長)くらいでしょうか)が中心ということもあり、医療の世界に身に置くものとしては刺激的な意見が出ています。
こうした意見に皆さんはどのようにお感じになりますでしょうか。
〈医師の偏在・医療供給体制等について〉
・必要な診療科に必要な医師が回っているかどうかという問題は、コロナ以前からの問題ではあるが、必要なときに必要な医療がきちんと受けられるような体制を国として整えていく必要がある。
・医師の報酬は税金と保険料。医療機関や医師の自由度はもう少し狭めた形で国の政策に協力する職業という形の業にするべきではないか。
・法律で、病院の義務づけを増やしたり、開業を含めてもっと強力に配置を調整できるようにしたりしないと、(中略)、日本全体の人材資源にも大きな悪い影響が出るのではないか。
・医療費をこれからどう把握してコントロールしていくかが、今後数十年の財政運営の肝になる。医療機関の経営情報のさらなる見える化が必要。経営情報のデータベースについては、国民への説明責任の観点を踏まえて、職種別の給与や人数の提出を義務化することを財審としてもしっかり求めていくべき。
〈コロナ禍での予算執行や医療体制の検証〉
・今回のコロナ禍で、世界に冠たると言われてきた日本の医療体制の脆弱性があらわになった。目指すのは、無駄なく効率的かつ危機時にも強靱で、持続可能な医療体制。急性期を中心とする大病院と、かかりつけ医を組み合わせた最適な医療提供体制をまずしっかりデザインした上で、再編に向けて国と自治体がいかにイニシアチブを発揮できるかがポイント。
・コロナが終わりかけの今こそ、どういう問題があったのかをきちんと検証しなければならない。医療機関の役割分担ができていなかったことを反省し、病院の役割をきちんと法整備まで持っていく必要があるのではないか。
・今回公立病院の経営が急激に改善しているが、パンデミックの中で大赤字が大黒字になるのはおかしいこと。次の危機に対する備えとして、検証し直すことが必要。
・医療の世界は、一般の国民の目から見たら、特別扱いされているのではないかということがコロナ禍であらわになった側面もある。
・未来の非常時に備えるためにも、医療提供体制の構造課題を解決することは非常に重要。
〈地域医療構想〉
・地域医療構想が進まないのは、まだ経営にゆとりがあるからである。しかし、将来必ず医療需要は減少していく中で、競争よりも協調に転じた人たちが模範となるような制度を今後とも検討していってもらいたい。
・病院の機能分化は、これまで看護配置に基づいて行われてきたが、看護配置というインプット指標は、病床が果たしている医療機能を代理するにはかなり距離がある指標である。病院の機能分化は、本来果たしている医療機能に基づいて行うべきものであり、患者の重症度などの実績を反映した体系に展開していくことが必要。
・民間の中小規模の病院が多く医療資源が散財しているが、点ではなく面で地域の実情に応じて連携できるという意味では、地域医療連携推進法人はとても良い。場合によっては、地域や地区の医師会も中心になって連携を進める、責任を持たせて進めることもあるのではないか。
・地域医療構想について、医療計画の責任主体である都道府県知事にもっとリーダーシップを発揮していただき、全国一律でなく都道府県独自でもできることは進めてもらえるような環境整備が必要。
・医師の偏在、診療科の偏在が深刻になれば、日本全体の国民皆保険の維持も難しくなる。対策の更なる検討が必要。
・急性期医療について、単純に全国一律の人員配置を基準とするのではなく、急性期で求められる実績あるいはアウトカムに応じたものに転換していくという視点が重要。
・かかりつけ医機能を持つ医療者ないしは医療グループを公的に認定して、そこに責任を持ってもらう。代わりに、しかるべき報酬の枠組みをつくるといった追加的な措置を検討いただきたい。
〈リフィル処方箋について〉
リフィル処方箋について、その活用促進のため、薬剤師から処方医への働きかけを評価する仕組みはもちろん、OTC類似薬の場合薬剤師の判断で切替えをできるようにすることは早急に検討していくべき。また、状況によっては診療報酬へのダイレクトな反映も検討していくべき。
・リフィル処方箋については、患者・消費者の認知度がものすごく低い。認知向上が生み出す効果を試算して、目標設定をして認知向上に取り組めると良いのではないか。
・令和4年度診療報酬本体の改定率がプラス0.43%で、そのうちのマイナス0.1%がリフィル処方箋の普及によって、その分改定率を下げられるということで取りまとめられたにもかかわらず、たかだか0.01%のマイナスにとどまっているということであれば、令和6年度診療報酬改定では、その未達の分は診療報酬を上げないなどしっかり実績を次の診療報酬改定に反映させるような形にすべき。
以上
引き続き行政の動きを注視してまいります。
株式会社名南メディケアコンサルティング シニアコンサルタント
薬剤師・中小企業診断士 植木隆之
財務省ホームページに掲載されている 議事要旨のなかから、筆者が特に気になった部分を、カテゴリーに別けてご紹介します。
あくまでも、財務大臣の諮問機関であり、委員も主に経済学者/アナリスト系と企業経営者(中でも医療に関わりありそうなのは傘下に製薬会社をもつ十倉雅和分科会長(住友化学(株)会長/経団連会長)くらいでしょうか)が中心ということもあり、医療の世界に身に置くものとしては刺激的な意見が出ています。
こうした意見に皆さんはどのようにお感じになりますでしょうか。
〈医師の偏在・医療供給体制等について〉
・必要な診療科に必要な医師が回っているかどうかという問題は、コロナ以前からの問題ではあるが、必要なときに必要な医療がきちんと受けられるような体制を国として整えていく必要がある。
・医師の報酬は税金と保険料。医療機関や医師の自由度はもう少し狭めた形で国の政策に協力する職業という形の業にするべきではないか。
・法律で、病院の義務づけを増やしたり、開業を含めてもっと強力に配置を調整できるようにしたりしないと、(中略)、日本全体の人材資源にも大きな悪い影響が出るのではないか。
・医療費をこれからどう把握してコントロールしていくかが、今後数十年の財政運営の肝になる。医療機関の経営情報のさらなる見える化が必要。経営情報のデータベースについては、国民への説明責任の観点を踏まえて、職種別の給与や人数の提出を義務化することを財審としてもしっかり求めていくべき。
〈コロナ禍での予算執行や医療体制の検証〉
・今回のコロナ禍で、世界に冠たると言われてきた日本の医療体制の脆弱性があらわになった。目指すのは、無駄なく効率的かつ危機時にも強靱で、持続可能な医療体制。急性期を中心とする大病院と、かかりつけ医を組み合わせた最適な医療提供体制をまずしっかりデザインした上で、再編に向けて国と自治体がいかにイニシアチブを発揮できるかがポイント。
・コロナが終わりかけの今こそ、どういう問題があったのかをきちんと検証しなければならない。医療機関の役割分担ができていなかったことを反省し、病院の役割をきちんと法整備まで持っていく必要があるのではないか。
・今回公立病院の経営が急激に改善しているが、パンデミックの中で大赤字が大黒字になるのはおかしいこと。次の危機に対する備えとして、検証し直すことが必要。
・医療の世界は、一般の国民の目から見たら、特別扱いされているのではないかということがコロナ禍であらわになった側面もある。
・未来の非常時に備えるためにも、医療提供体制の構造課題を解決することは非常に重要。
〈地域医療構想〉
・地域医療構想が進まないのは、まだ経営にゆとりがあるからである。しかし、将来必ず医療需要は減少していく中で、競争よりも協調に転じた人たちが模範となるような制度を今後とも検討していってもらいたい。
・病院の機能分化は、これまで看護配置に基づいて行われてきたが、看護配置というインプット指標は、病床が果たしている医療機能を代理するにはかなり距離がある指標である。病院の機能分化は、本来果たしている医療機能に基づいて行うべきものであり、患者の重症度などの実績を反映した体系に展開していくことが必要。
・民間の中小規模の病院が多く医療資源が散財しているが、点ではなく面で地域の実情に応じて連携できるという意味では、地域医療連携推進法人はとても良い。場合によっては、地域や地区の医師会も中心になって連携を進める、責任を持たせて進めることもあるのではないか。
・地域医療構想について、医療計画の責任主体である都道府県知事にもっとリーダーシップを発揮していただき、全国一律でなく都道府県独自でもできることは進めてもらえるような環境整備が必要。
・医師の偏在、診療科の偏在が深刻になれば、日本全体の国民皆保険の維持も難しくなる。対策の更なる検討が必要。
・急性期医療について、単純に全国一律の人員配置を基準とするのではなく、急性期で求められる実績あるいはアウトカムに応じたものに転換していくという視点が重要。
・かかりつけ医機能を持つ医療者ないしは医療グループを公的に認定して、そこに責任を持ってもらう。代わりに、しかるべき報酬の枠組みをつくるといった追加的な措置を検討いただきたい。
〈リフィル処方箋について〉
リフィル処方箋について、その活用促進のため、薬剤師から処方医への働きかけを評価する仕組みはもちろん、OTC類似薬の場合薬剤師の判断で切替えをできるようにすることは早急に検討していくべき。また、状況によっては診療報酬へのダイレクトな反映も検討していくべき。
・リフィル処方箋については、患者・消費者の認知度がものすごく低い。認知向上が生み出す効果を試算して、目標設定をして認知向上に取り組めると良いのではないか。
・令和4年度診療報酬本体の改定率がプラス0.43%で、そのうちのマイナス0.1%がリフィル処方箋の普及によって、その分改定率を下げられるということで取りまとめられたにもかかわらず、たかだか0.01%のマイナスにとどまっているということであれば、令和6年度診療報酬改定では、その未達の分は診療報酬を上げないなどしっかり実績を次の診療報酬改定に反映させるような形にすべき。
以上
引き続き行政の動きを注視してまいります。
株式会社名南メディケアコンサルティング シニアコンサルタント
薬剤師・中小企業診断士 植木隆之
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